モノ作りを主題・背景にする映画や作劇・ドラマは、総じて大当たりしやすい。まだ未見である「ハケンアニメ!」は、そろそろ見に行っとかないといけない時間帯に入っているのだが、ここ最近のメイキング映画ということになると、「映画大好きポンポさん」、「SHIROBAKO」、「サマーフィルムにのって」「映像研には手を出すな!」あたりが想起できるわけだけれど、今や一定の市民権を得ている同人世界を書いた原作を採用したあたりに、一種の意図というものを感じ取る。

BL「も」好きなうららと、「きれいな絵」というだけで衝動買いしたら実は、となった雪。二人がどのように知り合い、交流を深めていくか、が序盤で結構な尺を取って説明されるわけだけれど、我々はこの時点では、「読み手」として同じ立場にいることを理解する。年を取ってる?ボーイズ・ラブという単語を言うのがはばかられる?そこに臆しない雪の胆力のあるセリフ回しの数々は、さすが名優宮本信子らしさが表現されていた。
一方のうらら役の芦田愛菜嬢は、今回は高校生という設定。もちろん可もなく不可もなく演じていたわけだけれど、時々彼女の心の中が不明瞭に感じられるところがすごくもやもやするのだ。特に一冊の同人誌を作り上げたにもかかわらず、ブースでお披露目しないあのシーンにはまったく賛同できなかった。なぜか?
作ったもの・発表したいことを具現化し、本が他人の手に渡ることの喜びを共有したいから同人誌を作ったはずなのに、それを「雪が来なかった」というただそれだけで発表しなかったことに、である。自分自身の弱さを言い訳にしていたわけだけど、原稿明け当日。朝日が差し込んでくる=徹夜までして臨んだ原稿、できた本を出さないなどということが理解できないのだ。たとえは若干強烈だが、苦労して授かった子供も流産させてしまう可能性だってありえるとわかってしまう。
もちろん、これは原作を翻案せずにそのまま描いたから、そうなっているという部分は理解しているし、うららの精神的成長が今後なされるという展開にも寄与しているから、別段目くじらを立てる話ではないと思うが、少なくとも「この映画に、自分や自分が成りたいと思う人はいなかった」と結論付けている。
某ブロガー氏は、年間ベスト、と公言しているようだが、当方は案外な部類。93点のファーストを91点に下方修正した。
趣味が合えば歳の差なんて。BL好きで何が悪いんですか?という振り切った題材にしたことは、BLのセリフの程よい重さも手伝って、物語の根底をうまく整わせている。BLの情景やセリフの伏線効果もあったので、一本の映画としての完成度は高い方だと言っておく。