多趣味・マツキヨの落書き帳

2013年(平成25年/皇紀2673年)1月、タイトル含めて大幅刷新いたしました。 現在、ダイエー店舗訪問記録/映画鑑賞記/即席麺試食記/ラーメン店訪問記がメイン記事となっております。画像/引用/リンク等は、ご随意に。

えちてつ物語

鉄道モチーフの映画で比較検討倶楽部 なぜ、「えちてつ」の方が評価高いのか?

「かぞくいろ」と「えちてつ物語」を見おわった。
当方としても2018年の秋公開で、よく似た背景の映画であり、しかもローカル私鉄(両者とも第三セクターだが、成り立ちは違う)が舞台になっている映画。どちらも大規模公開には程遠く、それほどでもない売り上げにとどまったもようである。

さて、今回の「比較検討倶楽部」は、この2タイトルをキャスティングの妙を交えつつ、なぜ私が「えちてつ」の方を上位にあげたのかを論じていく。
「かぞくいろ」の晶、「えちてつ」のいづみ。二人が役割は違えども主役として出張っている。前者は、「肥薩おれんじ鉄道」の運転士(見習い→最終盤で正式採用)として、後者は「えちぜん鉄道」のアテンダント(行きがかり上→中盤で正式採用)として。
前者の理由付けがあまりに弱いところは気にかかる。仕事がない→義父と同じ職場に行くという選択肢のなさにあきれる。あの局面で、他の仕事を探せなかった理由というものが知りたい。後者は、東京での仕事もうまくいかず、自分はお笑いに向いていない、というところに「渡りに船」状態。だから、動機が不純であるとしても問題ないのである。
仕事の取り組み具合は、当然運転士と、運行に直接携わらないアテンダントでは異なっていて当然であり、ギャグっぽいところがあった後者の方が、映画的であり笑える。
家族関係についても両者ともに異なる形をとる。前者が、連れ子と母親、義父という奇妙な関係。後者は血のつながらない兄弟という設定だった。仕事的に絡まない後者と違い、現役の運転士である義父との関係も取りざたされる前者は、その関係性の濃さが逆にストーリーを澱ませてしまっている。
「かぞくいろ」に引っ張られてしまった前者が家族のつながりを執拗に描いたのとは逆に、「えちてつ物語」は、そのまま、えちぜん鉄道という会社の成り立ちや今の会社の立ち位置を解説している部分も大きかった。

ここまで論じて、主役について考えてみる。
「かぞくいろ」は、主役もわき役もそつなくこなす有村架純を据えて盤石の体制を取った…はずである。だが、当方的には、あまりに器用にこなしてしまっているところに若干の違和感を禁じ得ない。一方の「えちてつ物語」はぶっちゃけ芸人としても中途半端な横澤夏子をキャスティングするという”大博打”にでた。

だが、と思い直す。
あまり「いろ」のついていない役者で撮ることに傾注した後者が、芸の優劣は別にして、新鮮に映ったのとは裏腹に、見事に「いろ」のついた有村嬢で撮った前者にそれほどの感動を催さず、むしろ2時間が苦痛に思える作品にしてしまったところは否定できない。
「えちてつ」は横澤で撮る意味があった。それは・中途半端な芸人キャラ ・現実的に面白くない ・それほどまでにきれいでない という、奇跡的なキャラクターだったからに他ならない。だから、彼女がもしスカウトされたら…風な見方もできるから、面白いし、「マジでそうなるかも」と思わせるだけの真実味がある。
他方、「かぞくいろ」の方はどうか?国村隼的な運転士はどこの3セクにもいそうだが、果たして有村みたいな、虫も殺さないような女性が運転士として活躍できるのか…それも、正直言って最終盤で独り立ちしているシーンしかなく、そこに至るまでの葛藤とかに時間を割いたおかげで、運転士としての矜持であるとか、心構えであるとかが見えにくかった。最後の歩道橋のシーンがそれに当たるとしても、「そこで語るのか」と思わざるを得ない。

「かぞくいろ」だから鉄道・運転士の描写が薄く、「えちてつ物語」だから鉄道の描写やアテンダントの役割が丁寧に描かれている、と簡単に評してしまいがちだが、別に鉄道の運転士でなくてもよかった「かぞくいろ」の評価が落ちてしまうのは、仕方ないところだといえる。実際材料が多すぎたのに、亡き夫との回想シーンがこれでもかと流されたり、不倫相手との密会をする女教師の場面とか、そこまで書かなくても、という内容ばかりが目立ってしまっていた。ストレートな「えちてつ」が、主役の下手さは別にして上位に来てしまうのはそういうところからである。

2019.1.3 三日連続w 「えちてつ物語」鑑賞記

20代前半ごろまで、当方はいっぱしの鉄道ファンだった。もっとも昨今問題ばかりを起こしている撮り鉄ではなく、旅行記や行く先々の紀行を楽しむ旅鉄という部類に属する。もちろん、旅先で写真を取ることもあるが、せいぜいスナップ程度。いまでこそデジカメでいくらでもシャッターが押せる時代だが、昔はフィルムが付き物なので、そう潤沢に撮って撮って撮りまくるほどではなかった。

2018年秋は、鉄道会社がバックグラウンドに付いた映画が2本も公開された。一つは、「肥薩おれんじ鉄道」という、旧の鹿児島本線を走る第三セクターの運転士を志す未亡人と、その家族を描いた「かぞくいろ」、もう一つは、東京で夢破れた芸人が地元私鉄のアテンダントに活路を見出していく「えちてつ物語」である。
のちのち「比較検討倶楽部」も立ち上げるつもりにしているが、すでにブログの記事にもしているように、全国公開封切初日は11月23日。あー、この日に川西店(0279)のオープンがなければ、そして閉鎖予定店舗を回るべく京都に出向いてなければ…いろいろと重なってしまった休日に忸怩たる思いが募る。
一旦見逃すと、なかなかいい時間帯で見ることがかなわない。だが、シネ・リーブル神戸でベリーベストな時間帯を発見。1/3が最終日であることも手伝って、矢も楯もたまらず現地に向かう。

果たせるかな、場内は30人弱の観客を認めてほっと胸をなでおろす。男性ソロが比較的多く、カップルも数組。平均はさすがに40代後半までとなったが、20代前半の層も来ていたのは意外である。
こちらのストーリーは平板そのもの。友人の結婚式に向かったものの、余興は大失敗。あげく列席者の服を汚してしまう。実家に帰れば兄からは邪険にされる。家を出た経緯に問題がありそうに書いてあるのは面白い。
アテンダントの仕事を頼まれる主人公。相方の行く先にめどがついたこともあり自身は故郷で頑張ってみようと志す。ちなみに新人候補性は3人。キャラ立ちがなかなか鋭かった。
ここからは研修を通しての地元の方との触れ合いが描かれる。おそらく、セリフアリの人たちは全員俳優さんだろう(腰の曲がった行商婆さんであれ)が、それ相応に素人っぽさも見えてなかなか悪くない。
で、いよいよの重大事件が巻き起こる。ここは実に"映画的"。何しろ、使っている車両はばらばら。ここはしっかりと鉄道ファンのみならず、細かい重箱の隅をつつくことを趣味にしている人から突っ込まれないようにしてほしかったところだ。
最終盤の、兄弟の想像上の会話は、むしろ不必要。来るのかどうかわからない妹を待ちわびる不安げな兄をもう少し強調しておけば、と悔やまれる。

採点の方だが、この作品に関しては「主役」の演技は度外視してみることにする。もちろんうまければ大幅プラス加点もあったが、想定の範囲内。むしろ悪目立ちするやらかした部分が多かった。ほかの部分では、実は劇伴に大きく加点したい。地元の高校の吹奏楽部の演奏を使うという、大胆なキャスティングなのだが、全然違和感ない。ストーリーも大筋平板だが、ところどころに山を用意してあるところは上げ/下げを意識して作ったんだろうな、とわかる。もちろん「滑っている」箇所もないわけではなく、時々「あーあ」となったりするのがもったいない。
というわけで85点というツイッターのファーストインプレッションままとする。「かぞくいろ」にあったような、不可解な作劇がなかったことが一番だし、何より主役の頑張り、冒頓さが生きている。
上手に演じる必要はない。真摯に役に向き合ってもらえたらそれでいいのだ。もちろん大女優、圧巻の演技、とはとてもじゃないが持ち上げすぎ。課題はあったが、「かぞくいろ」よりは見どころの多い作品だった。

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