「高木さんめぇ」
地団駄踏む西片のコミカルな反応を楽しむ「からかい上手の高木さん」は、新章=「(元)高木さん」と同時進行という形で、今でも連載は続いている。
よくぞここまでネタが枯渇しないものだ、と感心するわけだが、「中学校最後の夏休み」という予告の響きに、一種の終焉を想定していた。しかし、完全に終わっていない原作の推移がそうさせるのか、「(元)」のせいで、「どうせ結婚しちゃうんでしょ?」という結末がわかってしまっていることも災いして、そこまで大きく感情を揺さぶられるまでには至らなかった。

上映時間73分=テレビサイズ23分程度の約3回分(+エンドロールと考えると意外に腑に落ちる)。ただ、劇場版だから、二人の解像度がより深化すると思っていたのに、それはあまり感じられなかった。
それよりも、私は、サブキャラながら、出番の多かった三人娘の立ち居振る舞いに心を奪われる。三人一緒、ということを信条に過ごすミナ、体育会系のサナエ、中立的なユカリ。特にストーリーを引っ張るミナの積極性と、それに周りが動かされていく過程は、ある種結末が見えている本筋の二人より、どう動くか知りたくなる。
100のやりたいことを済ませていく3人が中学生最後の夏休みに対して、出港する船(自分たちの未来/去っていく夏休みの暗喩)に、手を振るシーンにはぐっと来た。夏祭りでも、地元の高校に行くことを決めたサナエの決断を全面的に支持する二人が、手をつなぐシーンに「ああ、この人たちのストーリーがもっと見たかった」と思ったのだが、よくよく調べてみると、この劇場版にはこの3人が主人公の「あしたは土曜日」が含まれていると知り、オープニングのクレジットの謎も解けたというわけである。
劇場版だから、と超絶オリジナルストーリーでも持って来て、西片を、高木さんを翻弄してくれるんじゃないか、と期待度は高かったが、「あー、それは、そうなるよね」という予定調和なラストシーンには少しだけ拍子抜けした。得点は、それでも一定の出来を勘案しての93点。大団円、といわれると難しいところではあるけれど、ここしか落としどころはないんだから仕方ないだろう。