「前田建設ファンタジー営業部」をかけた同じスクリーンで見る「グリンゴ」。
だが、鑑賞に至ったのは、20人にも満たない閑散ぶり。その大半が男性であり、平均年齢は40代後半。黒人男性が様々な仕打ちに逢いながら、どうやって人生大逆転を成し遂げるのか、が焦点だった。

さて、いきなりの採点である。
ツイッターファーストインプレッションは92点としたが、この視点−−サブタイトルの是非−−が勃興したことにより、一気に87点と急落することとなった。

「グリンゴ」というのは、スペイン語の「よそ者」、特にアメリカ系の白人に対して使われることが多いとされる。ただ、このタイトルを見て、主役がナイジェリア系黒人(劇中の本人談)なのにグリンゴを使っていることに少し違和感を感じた人もいたんではなかろうか?
もちろん、物語の端々に、グリンゴという単語はちょくちょく出てくる。それでも、彼が「最強の悪運男」とはどうしても見て取れないのだ。
だいたい、妻は友人であるはずの社長に寝取られ、挙句離婚を切り出される。会社買収に伴ってクビも同然の待遇。担当しているメキシコの工場は麻薬カルテルと手を結んで違法麻薬製造に手を染める。八方ふさがりだったのだ。
だが、ひょんなことから攻撃材料を見つけた主人公は反撃に打って出るのだが……ここに旅行客を装ってヤクを密輸しようとする二人連れや、宿を経営する兄弟、主人公を救出すべく雇われた社長の弟であり傭兵上がりの達人、そして麻薬組織が入り乱れての大混戦となるのである。

確かに、様々な支線をたどっていたいろいろな人たちが、メキシコの製薬会社工場にタイミングを同じくして一堂に会するという奇跡がそこに謳われるわけだが、「そんな奴おらへんやろう」と突っ込みたくなってしまうのだ。
マフィアと警察の銃撃戦も、映画だからと言ってしまえばそれまでだが、果たしてそういう展開になるのか、というところが正直わかりにくい。
ところどころに胸糞シーンやあっと驚くシーンも結構ある。マフィアのボスにしてみれば、自分に対してイエスマンでない奴など虫けら同然の命という見方をしているところは、恐ろしささえ覚える。主人公にしたところで、「最強」という割には、注射を怖がったり、まともに帰れるのに逃げようとしたり。彼がメキシコに行ってからの動きがどうにもしっくりこないのだ。
最終的には、彼のお手柄になる、麻薬カルテルの壊滅や違法薬物製造の罪に問われた社長などはまさにいい気味だ、ということになるのだが、一番狡猾だったのはシャリーズセロン演じる副社長だったということになるか……
それでも、新しい名前を手に入れて、海辺で小さなバーを開いた主人公が最後に見せた微笑で、救われた気持ちになれた。
悪事に手を染めて金持ちになるか、貧乏だけどつつましく正直に過ごすべきか?人生にとっての大テーマをいまさらながら問うている映画でもあった。