予告を見たのが神戸国際松竹。その映像を見ただけで鳥肌が立ってしまい、これは見なければ、とばかりに、同僚にまで宣伝をしまくった本作。
しかし、コロナ感染のあおりを食らって、こんな大作なのに当該上映回は、日曜日の昼下がりなのに悲しいかな10人に満たないというありさま。映画の良さや見てもらう努力をしたとしても伝わらないもどかしさを上映前に感じた次第である。

一応、インド映画といえば、きらびやかな原色使い、いきなりのダンシングシーンとミュージカル、そして大団円というフォーマットが付いて回る。すべてがそうとは言えないだろうが、こういった勝利の方程式がないことには本国での受けもよくないんだそうだ。
ここ最近、インド映画の存在感が増してきているのは、「予算さえ付ければ、ハリウッドも顔負けの作品が作られる」くらいに映画産業が成熟しているからだろう。そして、30億ルピー=日本円で約45億もの巨費を投じて作った本作だからこそ、世界的にもヒットしたものと考えられるのだ。

本編始まる前にSPECIAL THANKS TO……と、恐らく製作に関わったプロダクションやスポンサーがこれでもか、というほど列記される。企業の数も半端なかったわけだが、ここまでの人たちが関わっているのだから、いやがうえにも期待感が湧きあがる。
ワージーという、犯罪都市のマフィアの棟梁が謀殺される事件が発生。当初から覇権争いのあった組織だけに、「誰が」やったのかはすぐに見当が付く次第にしてある。このあたりはうまく持ってきたと思う。
覆面捜査官という触れ込みで捜査側に入ってきたアショーク。だが実はこの時点で我々は騙されてしまっていたのだった。「ある時は○○、またある時は××、しかしてその実体は……!」とは、某有名探偵シリーズの決めゼリフなのだが、変装は全くしない(立場は時々で詐称する)主人公が、こういうスタイルで観客を翻弄する内容だとは気が付かなかったので、その設定だけでしてやられたりする。
華がどうしても必要なインド映画の中にあって、このストーリーに不要だけれども不可欠な女性の存在。一人の女性警官に一目ぼれするアショーク。ロマンスがないといけないとばかりに美女が絡むストーリーにしたのは骨太な全体像をぼやかせてしまっており、若干の戸惑いを隠せない。だって、彼女がキーパーソンでもないし、実際ストーリー上お邪魔虫なのだ。彼女を助けるといった目的が後半に出てくるのだが、無理やり感は半端ない。ラストシーンはその最たるものだろう。

ここまで、あまりいい目を見せれていないとお感じかも、だが、得点は95点となり、「十分お勧めできる」内容だとしておきたい。
ただ単なるマフィアと大泥棒との決戦映画ではない、サスペンス要素もちょっとしたラブロマンスも内包した内容。尺の長さやツッコミどころ満載なのはご愛敬。そう言ったマイナス面に目をつぶれば、主役であるブラバースの超人的な強さや、彼がどうしてここまでの行動に立ち入ったのかが思い知れる。なんといっても、ほぼCGであろうカーアクションも実物を使っているかのように感じるし、走行シーンに規制の緩いドバイのハイウェイが使われるなど、「金に糸目をつけなければ作られる」映像を堪能できることは間違いない。
大きく評価したのは、主人公の"最終的な立ち位置"がそこであったということ。首謀者は実はあの女性だったこと、そのお宝の内容も含めて、素晴らしい落としどころが見えたところである。
とはいうものの、込み入りすぎて一回見ただけで全体像を把握するのはなかなかに難しい。「ははあん。リピーターが続出したからヒットしたのかもな」と推測できるし、実際中毒性のある展開はおそらく何度見てもうならされるところだろうと思う。折角のインド映画もコロナウィルスには勝てなかった、というところか。