今年に入って、アニメーション映画は3タイトル見ている(うち一本は洋画/残る2本は邦画)が、邦画2タイトルは、複数回観たいわば旧作。新作のアニメーション映画となると、確かに何タイトルかは公開されていたが、ちょっと触手が動かなかった。
そんなことより、いきなりの「Get Wild」のイントロが流れて彼…獠が歩いてくる特報クラスの予告を見た時に鳥肌が立ったのを今でもはっきり覚えている。

北条司の一大名跡でもある、「シティーハンター」は、凄腕スナイパーの冴羽獠と、パートナーの牧村香の壮大なギャグテイストとガンアクションが見どころの漫画であり、アニメーションでもあった。
今回、総監督とクレジットされたこだま兼嗣氏といえば、ルパン二期、キャッツアイなども手掛ける重鎮。こだま/北原という当時の東京ムービー新社のベテランがサンライズの人物描き分けなど地力の底上げにも貢献した人物である。
何よりすごいのが、基本死去した一名を除き、当時の声の出演陣がほぼ出ていられること。主役の神谷/伊倉は当然として、海坊主の玄田、冴子役の麻上(一龍斎春水)あたりもそのまま。要するにキープコンセプトで「同窓会」的な作品に仕上がっているのである。
それが証拠に、劇場版としては90年の2本立てから実に29年ぶり。最後のTVスペシャル版から数えても20年の歳月が流れている。

それまでに映画や表現を取り巻く環境は大変動を遂げている。特にこの作品で羽目を外す獠の吐くセリフの最右翼は「もっこり」であり、下心全開のいやらしい顔立ちだったりする。果たして、それらをこの平成の御代に問題なく表現できるのか?気になるところではあるし、実際、彼が生まれたのは昭和年間。あれが認められていた時代のヒーローがどう変質しているのか、気にもなっていた。

さすがに3週目平日夕方回ともなると、いいスクリーン(ミント神戸6番)をあてがってもらっても、いい感じに埋まるまでには至らない。だが、私は目を疑った。
どう考えても、アニメーションを見る世代でもないし、テレビアニメーション当時を懐かしむ年代でもない60代後半の夫婦が座ってきたのである。おったまげた、という表現がふさわしい。私レベルの50台前半のカップルがいることは想定の範囲内。親子連れ/40代後半息子に70手前の親父という男性ペアも見受けられた。
それでもカップルの比率の多さはなかなかのもの。女性ソロも数名見かけたわけだが、主力はやはり「おっさんホイホイ」なところ。平均年齢は、ズバリ50代前半とする。男女比は2:1で男性優位。

もう新規に書くのもはばかられるので、これであらすじとしておきたい。
ツイッターの140字でかけてしまうその簡素さ。
今回、改めてこの作品を見て、いろいろな方が「水戸黄門」とか言っておられるのだが、私はこの作品シリーズは「勧善懲悪度高めの寅さん」と考えるとすとんと腑に落ちるのではないか、と思ったりしている。
そうは言っても当方は「フーテンの寅さん」シリーズにそれほど造詣は深くない。だが、本当に登場人物とかも似通っているじゃないの?と思ったりしている。
ここではその「比較検討倶楽部」はあえてやらないが、相手変わって主変わらず、なところとか、恋は決して成就しないところであるとか、気になりだしたら、そう見えてきてしまって仕方ないのである。
そりゃぁ、寅さんがドンパチやったりはしない。でも、根底にそういった日本情緒的な部分が見え隠れするのも事実である。

実はプライベートアイズというタイトル、当の本人・亜衣が街頭広告で見せたコンタクトに関する映像、さらに父の遺言が出てくる前段階から、軍事システムの鍵は「亜衣の虹彩にあった」ということは、うすうす感じていた。そこから先の、獠も海坊主も被弾しない(かすり傷すら負わせられない)ざるにもほどがある連射シーンには絶体絶命感を感じさせてくれずにむしろがっかりする。ここ最近は車両の描き分けにもうるさくなっているご時世なのに、モブ車両の適当ぶりにあっけにとられる。さらに言うなら、安定していない人物描き分けは、「どうしたサンライズ」といいたくなるような醜態をさらしてしまう。ところどころ「おっっ」といえる作画があるかと思ったら、人相が変わっていたり…少し丁寧さに欠けていたんではないか、と思わざるを得ない。
確かに20年近くも映像作品から遠ざかっているのだから、こうした質のばらつきが出てくるのは当然だし、そこを責めたいとは思わない。だが、「満を持して」送り込んだはずではないのか、とも思うのだ。絵の出来で少しいらいらしたところに、素でミサイルをよけられる能力、頬に傷すらつかない完璧すぎる防御……漫画的過ぎて新宿御苑?のバトルは呆れてしまった。

そんなわけで、映画としての突っ込みどころは満載。「寅さん」といったように、ストーリーは、平板そのもの。すぐさま香の幼馴染=悪の側、とわかってしまうあたりが残念である。
得点は86点まで。それもかなり想い出補正とエンディング補正がかかっている。最後に亜衣の渡した写真があの香だったことも想定内だし、その後のうすら寒い獠のセリフも全てがシティーハンターである。
いい意味で「キープコンセプト」、悪く言えば「冒険していない」内容。でも、獠と香の物語なのだから、これ以上発展させようがないことも事実。音楽の効果的な使い方には少し脱帽だが、もう少しだけ亜衣役の飯豊まりえ嬢に演技をしてほしかったところである。