よもや、この私がスイーツ映画評を書くことになるとは、思いもよらなかった。
なんだかんだ言っても50歳代。だからこそ、場違いな平服ではなく、仕事でもしているかのようなスーツで劇場に向かうのは、周りから見ると「滑稽」と見られる可能性が低くなるからである。
作った映像に対する敬意と、「データを取る」という仕事の側面。事実当方は、すでに報じているように、観客動向や男女比、感じられる限りの平均年齢などをはじき出し、映画の基礎データから読み取れる考察も欠かしていない。

封切日の昼回。プレミアムフライデーとはいうものの、当然のようにいっぱいになるはずがない。最終的には40人程度で収まる。男性ソロは3人しか認められず(含む当方)、当然のように私が最年長であると自覚できる観客層にも納得である。男女比は5:1以上。平均年齢は20代後半のレベルと見る。

勉強にしか興味のない雫と、曲がったことが大嫌いの春。特にいじめられている人を見つけると我慢ならなくなる春の行動は、それを認めて屋上から車の上に飛び乗り、風に舞わせるようにコテンパンにやっつける、漫画チックなオープニングで幕を開ける。
家にやってきた雫を認めて、春が急接近。あっという間の友達宣言にも、雫は知らんぷり。導入部は、もう一人の落ちこぼれクラスメートが絡んできて二人の間の人間関係も厚みを帯び始める。クラスメートたちの春に対する思いが、そこかしこで聞かれるようになり、雫も胸を躍らせる。前作「君の膵臓を食べたい」よりさらに踏み込んで、どこで撮ったのかを分からなくする手法は健在。だが、ビーナスブリッジだけは反則ですぜ、監督さん。

雫を巡る恋のさや当ては、他校のお坊ちゃまを交えてさらに混とん。それでも、自由奔放な春の行動や親分肌的な性格が周りに人を集めていく。
その春の隠された真実。兄がおり、疎遠なばかりか、春は毛嫌いするばかり。一方の雫も、母だけが仕事に出ている、ベランダ―・田口トモロウというダメダメ夫が家を護っているありさま。このキャスティングはなかなかよかった。
兄弟の和解が近づきつつある高2のタイミングで事態は一変する。春を失った雫の描写は実に感じ入らせる。
卒業式。またしても春の私物の処理・運搬係にさせられる雫。校庭の石段で段ボールをぶちまけてしまうシーンは、まさに今までが走馬灯のようになって思い浮かび、私もぐっとくる。

だが、春は帰ってきていたのだった。すべてを捨てた旅だったはずなのに、舞い戻ってきていたのだった。再会で二人が抱きしめるところでエンドロール。さなかには二人の結婚式が執り行われるシーンで幕を閉じる。

正直、がっかり、ではなかったが、もっともっとエモーショナルに撮れる監督さんだと思っていた。土屋大鳳と菅田将暉というビッグネーム。監督の前作「キミスイ」に比べたら、むしろハードルを上げてもよかったのではないかと思っている。だが、やはり幾多の作品に出て色がついてしまっていることもあって、キミスイの二人ほど、監督の色に染まっていく感じには見受けられない。
そのアドリブチックな動きが成功しているのならいいのだが、私にはするっと感じさせてくれない。雫の感情の吐露の下手さ(恋愛に晩熟な部分が見られる)が、演技なのか地なのかw。もっと泣き笑いがあってしかるべきだったように思う。
月川組でもある浜辺美波嬢の演技も抑制的。春とデートしようとしてプレゼントを渡しそびれるシーンはうまく立ち回ったが、評価ポイントはそこだけ。サブキャラの中でも立ち位置が一番不明瞭だった。

そして、私がこの作品を見に行こうと思わせた最大の功労者は、カナヤンこと西野カナである。主題曲のみならず挿入歌を全曲担当。いきなりのオープニングで名曲「Best Friend」が流れた時は鳥肌ものだったが、そこから先がいけない。音楽担当者は別にいて、カナヤンの曲が時々挿入されるだけ。曲とドラマの相乗効果を狙っての起用と考えていたのだが、完全に滑っている。
曲とドラマの相乗効果…言わずもがな、の「君の名は。」で用いられた手法である。それが成功しているのかどうか。二番煎じと揶揄されてでも、女子に絶大な人気を誇るカナヤンの曲で彩られる恋愛模様は贅沢でもあると思っていたのだが…世の中そうはうまく行かないってところだろう。

採点はかなり厳しい。75点までだ。二人と監督との間の疎遠ぶりというか、雫と春を演じる二人として彼らが適任だったのか、とすら思える。ミスキャストとまで言う気はないが、お互いに寄り添っているようには感じなかった。もちろん、二人のキャリアは相当なものである。だからこその抜擢なのだろうが、もっと若手で撮ってもよかったんではないかとも思う。初々しさのなさは開始一秒でも感じるわけで、その点を割り引いても心に残らない部分が多い。
西野カナのファン層にも訴えかける部分が少ないのも残念なところだ。大ヒット曲は冒頭のベストフレンドだけ。RADWIMPSが「君の名は。」で見せた、映像に寄り添うようにBGMや主題歌を作ったのとはわけが違う、と早々に気が付くべきだった。試みとしては買うが、失敗していると断言する。
それでもスイーツ映画。あちこちですすり泣く声が聞けたのは収穫でもあるし、唯一の救いな部分だ。
一日は「いよいよ」あの名作と対峙する。どんな感情が勃興するか、楽しみで仕方ない。