映画鑑賞そのものは、地上波テレビでもやっているわけだが、それは「無料だけれど没入感の全くない」日常の中に組み込まれたものだと理解している。自由にトイレには立てるし、バリバリと音を立てての飲食もやりたい放題だ。かたや、映画館で見る映画は、いくばくかの料金、一つ座席に縛り付けられる窮屈感、なにより「そこに映画があるから」ばりに出向かないと鑑賞に至らない。
映画が、一時期、エンタメの主役だった時代、海外の大作や日本のシリーズものは、それなりに莫大な興行成績を上げていたが、今や、それこそ「鬼滅」程度のビッグヒットは数年に一度くらいしか訪れない。それは趣味や、映像体験が多種多様化した結果でもあり、映画産業が困窮するほどの縮小局面があったのもつい数十年前の話でもある。
だからこそ、人力でしか撮れない、60年代の作品は、人情物も、歴史ものも、それ相応に支持もされ、評価もされているのだ。「ベン・ハー」が、塚口サンサン劇場でのリバイバルを知った瞬間、当方は小躍りして喜んだほどである。
10時前に劇場に到着。館内は、オールド映画ファンを中心に、20名強が参集。平均年齢は60歳代前半、30代の青年が最若年ではなかっただろうか?
今更、ストーリーを振り返ることはしないし、そもそも採点だってするつもりはない。T-34とほぼ同等に、針が振りきれてしまっているからだし、同じ映画を同じ撮影技術で撮ることなど、どうあっても難しい。もはや「撮れない」文化遺産のような作品だから、という側面もある。
だからといって、採点できないわけではない。主役のみならず、登場人物の心の揺れ動きをメインに見れば、その時々で見せる表情の変化、それを気付かせるBGMの変化などが組み合わさり、人間ドラマとしての出来がこれ以上ないほど綿密に、誰が見ても一方向にしか考えが及ばないように仕向けている演出の数々が実にわかりやすいのである。
何より、適度な長回しが、物語に没入させるいい効果を醸し出している。演じる側にしてみれば、たまったものではないんだろうけど、そこは映画で鍛えられている名優ぞろい。監督の指示とかも難なくこなしたんじゃなかろうか、と思う。
今の技術からすれば、簡単に作れてしまうシーンの数々も大量のにんげんを投入することで実現化してしまう力技の凄さは、この作品の真骨頂でもある。特殊効果や、VFX、CGなんて言うその当時からすれば「魔法」のような映像技術もほとんどない時代。戦車シーンの観客はすべて動員されたエキストラだろうし(当然当時の風俗に照らし合わされた衣装に身を纏っているから、その数だけでも半端ない)、同じく行軍するローマ軍兵士もそれなりの数の鎧や武具も必要になってくる。アナログで撮らざるを得ない時代に、大量の予算をかけて撮った映画が、半世紀以上たった現在でも受け入れられ、斬新に映る。
テレビや円盤などで手軽に見られるのに、あえて劇場で見なくても、という声もわからないではない。だが、「スクリーンで見なくては迫力が伝わらない」映画も応分に存在する。本作はたとえミニシアタークラスであっても、スクリーンで見て、その大画面に繰り広げられるスペクタクルな映像に身をゆだねてほしい。リバイバルとして地元でやっているなら、ぜひ、時間を都合して見てほしい一本である。
映画が、一時期、エンタメの主役だった時代、海外の大作や日本のシリーズものは、それなりに莫大な興行成績を上げていたが、今や、それこそ「鬼滅」程度のビッグヒットは数年に一度くらいしか訪れない。それは趣味や、映像体験が多種多様化した結果でもあり、映画産業が困窮するほどの縮小局面があったのもつい数十年前の話でもある。
だからこそ、人力でしか撮れない、60年代の作品は、人情物も、歴史ものも、それ相応に支持もされ、評価もされているのだ。「ベン・ハー」が、塚口サンサン劇場でのリバイバルを知った瞬間、当方は小躍りして喜んだほどである。
10時前に劇場に到着。館内は、オールド映画ファンを中心に、20名強が参集。平均年齢は60歳代前半、30代の青年が最若年ではなかっただろうか?
今更、ストーリーを振り返ることはしないし、そもそも採点だってするつもりはない。T-34とほぼ同等に、針が振りきれてしまっているからだし、同じ映画を同じ撮影技術で撮ることなど、どうあっても難しい。もはや「撮れない」文化遺産のような作品だから、という側面もある。
だからといって、採点できないわけではない。主役のみならず、登場人物の心の揺れ動きをメインに見れば、その時々で見せる表情の変化、それを気付かせるBGMの変化などが組み合わさり、人間ドラマとしての出来がこれ以上ないほど綿密に、誰が見ても一方向にしか考えが及ばないように仕向けている演出の数々が実にわかりやすいのである。
何より、適度な長回しが、物語に没入させるいい効果を醸し出している。演じる側にしてみれば、たまったものではないんだろうけど、そこは映画で鍛えられている名優ぞろい。監督の指示とかも難なくこなしたんじゃなかろうか、と思う。
今の技術からすれば、簡単に作れてしまうシーンの数々も大量のにんげんを投入することで実現化してしまう力技の凄さは、この作品の真骨頂でもある。特殊効果や、VFX、CGなんて言うその当時からすれば「魔法」のような映像技術もほとんどない時代。戦車シーンの観客はすべて動員されたエキストラだろうし(当然当時の風俗に照らし合わされた衣装に身を纏っているから、その数だけでも半端ない)、同じく行軍するローマ軍兵士もそれなりの数の鎧や武具も必要になってくる。アナログで撮らざるを得ない時代に、大量の予算をかけて撮った映画が、半世紀以上たった現在でも受け入れられ、斬新に映る。
テレビや円盤などで手軽に見られるのに、あえて劇場で見なくても、という声もわからないではない。だが、「スクリーンで見なくては迫力が伝わらない」映画も応分に存在する。本作はたとえミニシアタークラスであっても、スクリーンで見て、その大画面に繰り広げられるスペクタクルな映像に身をゆだねてほしい。リバイバルとして地元でやっているなら、ぜひ、時間を都合して見てほしい一本である。