多趣味・マツキヨの落書き帳

2013年(平成25年/皇紀2673年)1月、タイトル含めて大幅刷新いたしました。 現在、ダイエー店舗訪問記録/映画鑑賞記/即席麺試食記/ラーメン店訪問記がメイン記事となっております。画像/引用/リンク等は、ご随意に。

空飛ぶタイヤ

2018.7.2 コミカルだと思いきや のみとり侍 鑑賞記

シネピピアでの「君の名は。」鑑賞に関わった2017年の初夏。2017.7.14の3回鑑賞は、インターバルがあったものの、そのすべての上映回での観客動向などは非常に面白かった。

もちろん複数回観ることは確定していたので、有無を言わさず会員に。入会金500円/年会費1500円だが、1000円分=一回鑑賞券が付録で付いてくる。実質500円で更新できるというのだから、お得である。
その鑑賞券の期限がまじかに迫っていた。慌ててスケジュールを確認すると、邦画タイトルを発見。仕事終わりでも行ける時間帯とわかって勇躍売布神社まで向かう。

予告は何度も見ていたのだが、在阪6局が製作に関与する珍しい呉越同舟型の製作委員会。予告では、各局の女性アナウンサーが念の入った宣伝をやっていたのが印象的だ。そんなだから、よほど面白いのかな、と思って向かうわけだが…

藩主の不興を買って「蚤とり」に身をやつさなくてはならなくなった、勘定方。それを怪優・阿部寛が演じている。実はこの時点でかなりウキウキであった。「テルマエ・ロマエ」「祈りの鐘が下りる時」、テレビドラマなら「結婚できない男」「TRICK」あたりが有名どころ。彼の演技がどう出てくるのかはかなり期待していた。
実はこの当時の「蚤とり」とは、今でいうところの「デリヘル」、しかも女が男を買うという「売春夫」のことだった。うはっっっwwwお気楽映画かと思いきや、そういう設定でしたか…
当然濡れまくってはいないが本番風の描写もそこかしこにちりばめられている。まあ、おぱーいがまるまる見えるくらいはご愛敬だが、小間物屋の婿養子になってしまった旗本の末裔として出ている豊川悦司の本番さながらの演技は、堂に入っている。下手と言われて発奮する阿部演じる寛之進に見せつけるかのごとく濡れ場を堂々と演じたあたりは役者魂!を見せられたように感じた。
長屋に居候することになる寛之進。ここでこれまた貧乏暮らしに身をやつす斎藤工演じる友之介と出会う。家宝の刀を大事にしまい込む友之介。これもいい伏線になっていた。
めきめき頭角を現し始める寛之進。なじみも出てき始めて、順風満帆かと思われたのだが、老中・田沼意次の失脚で事態は急転。罪人扱いされてしまう。だが、突如元居た藩の助け舟が出されるのだが、それは、果たして生か、死か?

市井のことなど知らず「蚤とり」がそういう裏家業だったことに気がつかない武士。早合点する親分のせいもあって、なぜか仇討に身をやつしていることになってしまっている設定からして、苦笑せざるを得ない。なんか落語的だな、と思っていたら、Wikiによると、短編集を再構築したものだそうだ。特にまだ若旦那だったころの豊悦がうなぎ屋で語るあのシークエンスは、本当に面白い。
まあ、この内容ならR+15は当然だし、こういうまとめ方は、吉本新喜劇チックにも見えるところがややポイント低い。それでも、意次役の文枝師匠は、さすが、老獪で癖のある演技をやってのけている。
採点だが、60点までとしたい。先の読めるストーリーや、なぜか寛之進の真摯な態度で往診を決断する医者(伊武雅刀)は実はそんなに悪い人ではないところとか、いくらでもひねりようがあったところがある。前田敦子の女将さん役もややミスキャスト。こんな嫉妬深い女は御免蒙りたい。でも、そんなくだらなさを寺島しのぶの妖艶な芝居で帳消しにできるのだから、やはりキャスティングは侮れない。
逆境に落とされる主人公役としての阿部寛はばっちりはまっている。そこだけが救いであった。

2018.6.20 強引なまとめが吉と出ず 空飛ぶタイヤ 鑑賞記

池井戸潤原作のドラマは、TBS系列でやった「半沢直樹」に代表されるように、しっかりした舞台背景と、骨太な登場人物、そしてそのバックボーンに裏打ちされた、演者の没入感が映像化された時にとてつもない厚みでもって視聴者に訴えかけてくるからこそ、受けたわけだし、実際の文章だけの小説であっても、それが感じられるから読者も付いてくる。
企業体質を題材に持ってこさせたら、山崎豊子(沈まぬ太陽)か、池井戸か、と言われるほどの筆致で迫ってくるわけだが、この映画原作も、某大手自動車メーカーのリコール隠しに端を発している。言わずもがなのスリーダイヤの会社(Fで始まるブランド名といえば感のいい方ならわかる)であり、実際の死亡事故も起こしている。原作が結構オブラートに包んでいるとはいっても史実が裏打ちしてくれるから説得力は半端ない。

それにしても登場人物の多彩なことよ。入ってきたての整備士とキャッチボールできるほどの2代目社長に長瀬、番頭に笹野、整備部隊に六角、対する自動車会社側には窓口になる課長にディーン、課長と真相を暴く関係に至るムロ、グループ銀行サイドでは、自動車会社に対する稟議を通すかどうかを迷う役に高橋、真相を追うジャーナリスト役に小池、社長の妻に深田、そして悪の根源たる自動車会社の専務に岸部、所轄刑事に寺脇という布陣。けして安くはないが、超のつく一流でもない中堅どころが競い合う形になった。ちなみに入ってきたての整備士がジャニーズ系だと知らされたのだが、演技はなかなかにいいものを持っていると感じられた。

実際、2時間程度でまとめる原作なのか、と言われるとかなり厳しいといわざるを得ない。この程度のスピードでは理解できない人がいてもおかしくない。それはいくら登場人物に役名のテロップを入れたとしても同じである。運送会社、自動車会社、銀行。特に自動車会社内部は、品質保証部や販売と部署が入り乱れる。しかもみんなイケメンと来ている。美男子ぞろいで心配することしきり。

映画としての難易度は決して高くない。時系列も入り乱れることなく、すんなり理解できるだろうと思う。だから、もう少し丁寧に描くとか、前後編にして厚みを持たせるかした方がもっとよかったのに、と思う。一本にまとめることの難しさを後半のサラッとした流れが物語っているようである。
そんなわけで採点である。真実に迫る主人公たる社長。しかし、別に車に明るいわけでもない彼が奮闘したその時間というものは、無駄ではなかったといえるのか?金に転ばなかった正義漢と、たちまち困る懐事情を天秤にかけた描写に、苦悩があまりにじみ出ていなかったところは減点だ。子供の描いた文章は反則技。なのであまり加点要素にならない。先にも書いたがいろいろつじつまのあってしまうところに無理やり感を感じずにはいられない。よって81点どまりとする。

多彩すぎる材料に料理人たる俳優の多さ。ぎりぎりうまくまとめました、だが、どうにも読了感が薄いのだ。「血の通った対応」を願う社長と対比的な、「会社のコマ」たるディーン。この二人が最後まで分かち合わなかったラストあたりも、何とはなしに不十分さを浮きだたせる。加害者であり被害者の社長がそれでも苦汁をなめさせられた会社のトラックを使い続けなくてはならないところをもう少し掘り下げておけばよかったのに、と思う。


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