ここ最近、日本の時代劇の退潮振りが叫ばれて久しい。
超の付くロングランだった「水戸黄門」の放送終了、主演俳優の死去による「必殺シリーズ」の不定期化など、江戸時代を題材にした時代劇は、たまのスペシャル版でのお目見え以外で、連続ものとなると、現代劇に比べて手間隙がかかることもあいまって、ほとんど放送されなくなっている。

撮影の手間隙もさることながら、時代劇のできる俳優が高齢になってしまっていたり、そもそも原作自体も乏しくなっているところも影響している。BSでは「大岡越前」をなんと、仕事人をしている東山紀之が演じて話題になっているのだが、事ほど左様に、キャスティングの面でも不自由をしているさまが目に浮かぶ。

前回の木曜時代劇はあの「あっちゃん」こと前田敦子の初の時代劇主演、しかも悲恋ものといってもいい八百屋お七ねたのはずなのに視聴率はズダボロ。最終回で持ち直したもののときすでに遅し。またしても「もっていなさぶり」を披露するにとどまってしまった。
年も改まって迎えた今回は、赤川次郎氏原作による「鼠、江戸を疾る」でスタート。タッキーこと滝沢秀明演じる次郎吉が、鼠小僧として暗躍する過程で、さまざまな事件に巻き込まれながらも彼らしい決着をつけていくという形で解決に結びつけるという、新解釈の「鼠小僧」物語である。

ただ単に義賊として描かれているだけの次郎吉の、実際の社会生活はどうだったのか、また、彼が知りえた「闇夜の世界」での出来事にどう対峙するのか・・・。第一話は辻斬りと割れた拝領茶碗に絡む悪を独自の手法で明らかにしていくという、ちょっとした「ハングマン」的な役割を次郎吉が担うという点が、小気味よかった。次郎吉が探偵まがいのことをしている、と言う設定あたりは赤川氏ならではといえるのだが、こういう感覚はどこから出てくるのだろうか・・・。

脇役も意外と個性派ぞろい。特に賑やかしに我が家が3人とも登場している点は面白い。時代劇のフォーマットに、現代的な要素を入れてみたらどうなるのか・・・ハイブリッドが織り成す、なんともいえない安堵感と爽快感。初回視聴率も10%近くにまで伸長。クールな滝沢鼠小僧が時代劇に新風を巻き起こすのか、期待してみて行きたい。