すでに「秒速」の前段階で、著名フォロワーの方とは合流済み。お一方は、3桁鑑賞の名古屋方面の方。もう一方も、冬コミに出典されたことのある筋金入りの方である。そのいずれもがまごうことなきおっさん世代。新海ファンに至ったのはいずれも君縄からと思われるのだが、これほどのはまり度合いを持つ作品だとは作った本人も気がつくまい。ちなみに3桁君縄の方であっても、秒速/言の葉はスクリーン初対峙。それだけでも、彼がいかに「君縄」にははまったのかを如実にあらわすデータといえる。

1/14日曜日の言の葉の庭の1回目。
館内は、前日とは打って変わり、かなりの観客の入りを確認する。
日曜日、いい時間帯だからか、「新海」ブランドに惹かれたからか。とにかく多彩な観客の顔ぶれに当方も頬が緩む。カップル/ペア/グループ/家族連れ/老若男女。旧作にこれほど人が集まるのだ。これは興行主にしてもしてやったりってなもんだろう。

実は、この鑑賞回の時点で、ユキノの語った、歩く練習、というセリフがズバッっっと脳内にインプットされた。その後に語った、27歳の私は、15歳のころから何も変わっていない、というセリフがそれをうまく補完する。

ラストに至る、ゲリラ豪雨に見舞われた二人が、ユキノの部屋で楽し気に食事をするシーン。そして二人はいみじくも声を揃える。
         「今が、今まで生きてきて、一番幸せかもしれない」

なのに、ユキノの一言ですべてが壊されていく。なんで、そこは上から目線だったんだろう…
本当の気持ちに気が付くユキノ。だが今度はタカオの強がりがいじらしい。「あなたのことが嫌いです」。そこからの罵倒は、ユキノのHPを確実に奪っていく。そして、それは見ている観客をも、タカオの気持ちにさせてしまう。その煮え切らない、上から目線の、常に服従させておきたいだけの女性。すべてを看破されて泣きじゃくり、抱き付くユキノ。ここの表現・セリフは、正直胸を打つ。「新海誠展」でもこのラストシーンは繰り返し流れていたが、ここだけ取り出しても十分に感動できてしまうところが嫌らしい。

この作品も、一応すれ違っている風には見せている。だが、お互いが何の感情の発露もないまま別れてしまっている「秒速」の貴樹と明里とは少し違う。少し脱線するが、貴樹と明里は、あのまま結ばれていてもおかしくなかった。もっと言えば、中学生のころの自分に正直(立ち止まったまま)なのは貴樹で、裏切った(貴樹を選ばなかった)のは明里だともいえる。だが、それってどんな幼馴染でも起こりえることだし、現代の恋愛では、何の障害もなくゴールインできる方が稀有な存在である。
一方のタカオとユキノはどうであったか?年の差?学生と先生?そもそもが成り立ちようのない関係だったはずだ。その部分はあまり出さずに、最後は男と女の対峙にした。そう。それは、15歳のままのユキノが、やや大人びたタカオに抱き付くように見せたところでも明らかである。

タカオは、間違いなく自分の階段を歩いている。だが、ユキノはどうであろうか?逃げるように実家に戻ったユキノは、うまく教師をやっているようだったが果たしてそれが彼女の生きる道だったのか、どうか…彼と彼女が結ばれないのは半分仕方ないにしても、普通は逆になりそうな、生徒と先生の恋愛をアニメーションで描き切ろうとしたのは特筆に値する。

それでも、美麗すぎる描写が、二人の人間関係をくっきりとは浮き彫りにしない。むしろ、煮え切らなさにイライラするのだ。なんといっても、上級生に喧嘩を吹っ掛けたくだりがまだよく理解できない。それって必要な”行動”だったのか…抵抗することが男気だとするならば、すべてを受け止めて飲みこむこともできたはず。それをしなかったタカオの無分別さと青さが気になる。

初見のインプレッションは、『映像だけなら98点だが、総合だと75点くらいと言ったところか。』としている。実は、総合は少し上げたいと思う。理由は、ただ単なる別れが前提ではないからである。タカオはラストで「逢いに行こう」と言っている。彼も、自分の足で歩けるようになることを望んでいるのだ。そこに少しだけ救いが生じる。積極的になっていくタカオがユキノを本当に好きになっていけるのか?その未来の彼らに祝意を表して、83点まではランクアップする。でもすでに2017年版でも上げている通り、あそこまでしかランクは上がりようがない。これからいい作品が出てきたら、この作品のランクは急落するだろうことは覚えておいてもらいたい。